Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第6章 答え
「──私、大切なことを忘れてた。母さんが教えてくれたこと」
悲しい時、いつも涙を流せばカルラは決まってエミリに『笑って』と声を掛け、抱き締めていた。
優しい母の愛情に、エミリも気づけば悲しみを忘れて笑顔になっていた。
『エミリが泣いていると母さんも悲しい』
その言葉の意味が、想いがよく理解できた。
エミリも、カルラが笑っていると幸せな気持ちになれるから。
「巨人に対する憎しみで、いつの間にかそんな出来事すらも忘れてた。……きっと、いまここに母さんがいたら、私に『笑って』って言って抱き締めてくれる」
愛しい母の温もりを思い出しながら、同じようにリノを優しく抱き締める。
「大きくなった"いま"なら分かる。母さんが私に伝えたかったこと……」
母さんが教えてくれたこと。
『どんなに苦しくて、辛い時があっても、笑顔を忘れないで』
それは、悲しみに負けないで、いつも真っ直ぐ前を向いて自分の道を歩んでほしいと願うカルラの言葉だった。
「ねぇ、リノ。私、もう負けない。この先、きっと辛いことの繰り返しで涙を流すことだってあると思うけど……でも、どんなことがあっても前を向いていくよ」
そしていつか、私も誰かのチカラになれるような……そんな素敵な人になりたい。
ああ、そっか……一つだけ、わかったよ
『……私は、自分が何をしたいのか、そして、自分が出来ることを見つけるためにここに居ます!』
あの通過儀礼の時、どうしてそう答えたのか。
私のやりたいこと。
それは、エレンやミカサ、アルミン、フィデリオにペトラやオルオ……みんなが幸せに笑っている、そんな姿を見ていたい。
それが、『自分が何をしたいのか』の答えなんだ。