Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第23章 親友
家に帰って来たような温かさに目を細め、ハンジたちの存在を感じる。このままゆっくりと皆と夜を過ごしたい気持ちに流されそうになるが、忘れてはいけない。何のために、ここに来たのかを。
「あの、二ファさん……少し、お時間いただけますか?」
「あれ、私? 分隊長じゃなくて?」
「はい。その……ペトラとのことで、ちょっと……」
少し影を落として話すエミリの様子から、ハンジたちが纏っていた空気も変わる。
二人の仲に関しては、リヴァイやアメリを通して話は聞いていた。最初は、すぐに仲直りするものかと誰もが思っていたのだが、思っていた以上に深刻な問題となっており、実を言うとハンジらも二人を心配していたのだ。
「…………そっか。なら、モブリット、ケイジ、アーベル! 今から談話室でお酒飲むよーー!!」
「はい?」
ガシリ、とハンジはモブリットの肩に腕を回し、ケイジとアーベルにも視線で訴える。
”ここは二ファに任せて退散するよ”
そのメッセージを受信した三人は、大人しくハンジと共に研究室を出て行った。
パタリ、と扉が閉まる音が部屋に響き渡り、世界はエミリと二ファ、二人だけとなる。静かすぎる空間に少し緊張感が漂うが、それを紛らわせてくれたのは、意外にもこの散乱した研究室だった。
「……相変わらず散らかってるけど、座ろっか? 話し、聞くから」
エミリに手招きしながら椅子へ腰掛ける二ファの言葉に甘えて、彼女の向かい側に腰を下ろす。
それから、何と言葉を切り出して良いのかわからず、ずっと視線を机の上に固定していたエミリだが、一つ深呼吸をして、真っ直ぐと二ファの顔を瞳に映した。