Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第23章 親友
リヴァイの執務室を後にしたエミリが向かうのは、ハンジの研究室だ。この時間も相変わらずハンジが研究に没頭している時間であるため、二ファがそれを手伝うことも多い。
コンコン、と二回ノックをして返事もまたずに勝手に入室。
ハンジの研究室では、もうそれが暗黙のルールとなっている。この研究室の責任者であるハンジ自身が、研究に集中しすぎてノックに気づかないこともあるからだ。
扉を開けて中に入れば、相変わらず散らかった資料や本が目に入る。ここ最近はずっとリヴァイと共に行動していたため、この研究室に来るのも何だか久しぶりに感じた。
「ねぇ、モブリット!! 次はこれで巨人の捕獲を進言してみよう!!」
「何言ってんですか! こんな計画性のない作戦で話が通るわけないじゃないですか!!」
そして、ハンジの暴走とモブリットのツッコミも相変わらずのようである。
いつもと変わらず賑やかな光景。そばで資料を整理していた二ファやケイジ、アーベルはそのやり取りが最初から無いかのようにスルーを貫き通していた。
そんな二ファが、頬を引き攣らせて入口に立つエミリの存在に気づき、笑顔を向ける。
「あれ、エミリ! どうしたの?」
二ファのその掛け声に反応したのは、エミリだけでなくその場にいた全員だった。
「おおお!! エミリ! なんかひっさしぶりだねぇ〜〜!!」
「分隊長! 資料を投げないでください!!」
ハンジ班、久しぶりの集結! と声を張り上げると同時に資料まで宙へと放り投げるハンジの行動に、モブリットは絶望的な表情でヒラヒラと舞い落ちる資料たちを目に映している。
そんな我らが副分隊長に内心謝りつつも、どこかいつも通りの日常に戻れた気がして、少しホッとした。それはエミリだけの小さな秘密。