Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第23章 親友
地下街で、仲間という存在はいたものの、絆とは縁のない場所で生きてきた上に、友達と喧嘩するなどという経験もないリヴァイには、どうすることもできないのだ。
「悪いが、俺からは何もしてやれねえ……」
少々心が痛むが、今回の件に関しては、本当に見守ることしかできないようだ。
しかし、このままでは、現状は変わらないであろうことは目に見えている。考えを巡らせ、リヴァイは一つ、エミリに提案を持ちかける。
「エミリ」
「……はい?」
「この後、ニファの所にでも行ってこい」
「ニファさん、ですか……?」
突然、リヴァイの口から出された人物に、首を傾ける。
「あいつなら、お前と年も近いだろう。相談でもしてみろ」
何より、ニファはよくエミリとペトラの関係を気にかけていたし、新兵の頃から先輩として二人の成長を見守っていた。
反対に、年齢が近いことから、二人もよくニファのことを頼っていた。今の現状を変える相談役として、彼女はうってつけだろう。
「さっさとペトラと仲直りして来い。お前の辛気臭え顔見てると、こっちの気分も下がるだろうが」
「その言い方、なんかムカつきます」
「うるせえ。とっとと行ってこい」
ぶっきら棒なリヴァイの言葉に不貞腐れて見せるエミリだが、そこに彼なりの優しさがあることはちゃんと理解している。
少し冷めてしまったシチューをかき込み席を立ったエミリは、まっすぐ扉へと歩いていく。
「兵長、ありがとうございます」
そして、感謝の言葉を忘れずに言い残し、執務室を後にした。
「ったく、お前がらしくねえと調子が狂う」
静かになった執務室で、ポツリと呟く。そして、エミリに淹れてもらった紅茶を一口含んで喉を潤した。
「……あいつ、砂糖いくつ入れやがった」
いつにも増して甘い紅茶。そこには、完全にエミリの悪戯心が隠されていた。