Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第23章 親友
「…………えっと、」
「独房から出て五日経った。中に入っていた時間と合わせりゃ、もう八日目だぞ」
「それは、わかっています……」
スプーンと皿を机に置いて頭を悩ませるエミリだが、その様子はどこか怯えたようにも見える。ペトラと仲直りをするのが、そんなにも不安なのだろうか。
「わたし、わからないんです……」
「あ?」
「こんなとき、友達とどう仲直りしたらいいのか……」
予想外の言葉に、リヴァイは絶句する。
「わからねえって、お前、今更何言ってやがる。仲直りの仕方でそこまで悩むほど、お前にとっては難しいもんでもねえだろう」
いつも誰かのことで一生懸命で、よく同期たちの悩み事に耳を貸すことだってある。そういった揉め事の対処の仕方は、よく理解できているだろうと思っていたリヴァイにとって、今の彼女の発言は、衝撃的だった。
「兵長、私のことなんだと思っているんですか。ペトラみたいに仲良しの友達とこんな大きな喧嘩したの……初めてです」
「……。」
項垂れるエミリの様子から、彼女の言っていることは嘘ではないのだと感じた。
そして思い出す。エミリが訓練兵であった時の、彼女の人間関係を。
「小さい頃から、訓練兵のときだって、フィデリオやアメリ以外で、心を許せる友達なんていなかったんです。気が合わない子たちはもちろん、たまにお喋りする子たちとは、友達というよりか、本当に"同期"っていうだけで……」
だから、初めてなのだ。"親友"と喧嘩するのは……。その親友との仲直りの仕方がわからなくて、なんと声をかけて良いのかわからなくて、悩んでいる。
どうしたものかと溜息を吐き、目の前で項垂れるエミリの頭を凝視する。
なぜ、いつもすぐに行動に移すエミリが、ずっと思い悩んでばかりいるのか。その理由を理解したはいいものの、正直、リヴァイからは何も助言してやれない。