Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第23章 親友
「じゃあよ、ペトラ。お前はどうしたいんだよ?」
「……え」
突然放たれた、オルオからの質問。"どうしたいか"、それがペトラの心に刺さり、気持ちを揺れ動かす。
「どう、したいか……?」
「お前、さっきからエミリのことしか考えてねぇし……それって、結局お前も行動範囲が違うだけで、あいつと同じだろうがよ」
「っ!?」
オルオの指摘に、ペトラはハッと息を呑む。
お互いが大切だから、なかなか相手の心に踏み入ることができない。それは、自分もエミリも同じだったのだと。
相手を思うが故に吐き出せない本音、悩み。普段、その気遣いはたまたま上手くバランス良く形作られていたが、お互いが大切すぎて、今回のようなすれ違いが起きた。
「あいつが大事すぎて、あいつはお前が大事すぎて、本音が見えなくなっちまって……そんで、すれ違いが起きたんだろ。やり過ぎたんなら、戻せばいいじゃねぇか」
「…………戻す?」
「本音言いまくって喧嘩しろってことだよ!」
「あっ……」
結論を言い放ったオルオのお陰で、ペトラはようやく理解ができた。何故、時に喧嘩をすることも必要なのか。
気遣いなら、他人にだってできる。でも、本音を言うことなんて、心を許している者が相手でないとなかなかできないものだ。気遣うことでできる溝、それを埋めるのが"本音"なのだ。
もし、このままペトラがエミリを気遣い、本音を隠したままにしてしまうと、二人の距離はもっと遠くなる。
(…………また、エミリを一人にしちゃう)
それだけは、絶対にしたくない。
相手を思うからこその本音。その本音の役割とはなんなのか。それさえわかれば、もう、怖くなどない。
「私、ちゃんとエミリと向き合いたい。だから、全部、言うことにする」
自分はどうしたいのか。そして、友達とは、親友とは何なのか。それを再確認し、せっかく気づけた大切なこと。実行しなければ、何も始まらない。