Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第23章 親友
「は? ちょっと、オルオ。私がなんだって言うの?」
「おう、実はオルオがよお」
「てっめ、フィデリオ!! 言ったらお前……エミリが弟にあげるはずだったマグカップ、壊した犯人お前だって暴露すっからなあ!?」
「それはやめろおおお! あいつに殺される!! 確実に!!」
「て言うか、あれ壊したのあんただったのね」
男どものアホなやり取りにツッコミを入れながらも、ペトラの視線と言葉はどんどん冷たくなるばかりだ。
マグカップの破壊犯に関しては、エミリに同情するが、やはりまだ彼女に対する苛立ちは収まらない。
「とにかく、私はしばらく……エミリとは会わない」
二人から逃げるように背を向け、エミリが育てている薬草たちをじっと上から見下ろす。
本当は、エミリが心配だった。彼女の責任感の強さは、時に毒となりエミリ自身を蝕む。そして、孤独の渦を自ら作りだし、そこからまた誰かと時間を共有することを避けようとするのだ。訓練兵時の出来事が良い例である。
(でも、会ったらきっと……傷つけてしまう)
それが、それだけが怖かった。エミリの性格を知っているからこそ、彼女を深く傷つけてしまいそうで……今よりももっと、責任を感じさせてしまいそうで……。
お互い違う人間なのだから、衝突することはある。これまでも、エミリに振り回されることで疲れや呆れを感じることは、多々あった。でも、そんな気持ち以上にエミリのことが大切で、大好きだから、この状況でどう彼女と向き合えば良いのかわからないのだ。
こんなに大きな喧嘩を友達としたのは、これが生まれて初めてかもしれない。