Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第23章 親友
兵舎の外に最近建てられた薬草園には、管理人であるエミリが独房の中にいるにも関わらず、明かりが灯っていた。時計はもうすぐ十を超える頃で、空も辺りも真っ暗だ。そんな中で、薬草園の灯りはよく映えた。
そこを目指して中庭を歩くのは、二つの影。灯りを頼りに暗闇に慣れた目で、入口まで辿り着いたその影たちは、扉の取手に手をかけて中へ押し出した。
「やっぱここに居たか。ペトラ」
声をかけられ、それに反応したペトラが、彼らの方へ振り返る。
「フィデリオ、オルオ……」
自分の元へ歩み寄って来る親友たち。ペトラは目を細め、スっと視線を逸らした。
そんな彼女の様子は、完全にいつも違っている。原因は、間違いなくどうしようもないあの馬鹿のせいだ。
「お前、結局三日間、一回もエミリのとこ行かなかったな」
「…………。」
ペトラは、何も言わない。
「まだ怒ってんのか?」
「……それもあるけど、会ったら、また……酷いこと言っちゃいそうで……」
「言やあいいだろ! 散々、俺たちのこと振り回しやがったんだからよお!!」
しょぼくれているペトラにやれやれと肩を竦ませ、オルオもエミリに対する苛立ちを露わにする。
「とかなんとか言ってさあ、お前、何だかんだ三日間あいつのとこ通い続けて、説教してたじゃねぇか。えーっと、なんだっけ? お前のせいでペトラが、」
「うおいいいい!! 言うんじゃねえよこのバカ!」
説教の内容を暴露されそうになり、慌ててフィデリオの口を塞ぐオルオだが、時すでに遅し。ペトラは、冷たい視線をオルオに注ぐ。まるでそれは見えない冷凍ビームのようだ。