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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第23章 親友




「…………ペトラだけ、会いに来てくれなかったんです。三日間、一度も……」


浮かない顔で話を始めるエミリ。その小さな声に、リヴァイはただ耳を傾ける。


「フィデリオも、オルオも、二ファさんたちやナナバさんたちも、アメリだってわざわざ来てくれていたのに、ペトラだけ……」


つまり、それほど怒っているということなのだろう。いつも温厚なペトラだが、今回ばかりは彼女の堪忍袋の緒が切れてしまったらしい。

しかし、リヴァイにはペトラのその怒りが理解できた。それは、リヴァイだけでなく、ハンジやエルヴィンらも同様であろう。
何故、頼ろうとしないのか。一人で抱え込むのか、と。


「ペトラは……頼ってほしかったんだろう。お前に」


ペトラに代わって彼女の真意を口にするリヴァイのそれに、エミリは小さく頷いた。


"私達を頼ってほしい"


その言葉がまた頭の中に響く。その度に胸に刺さった刃が、また深くくい込んで、エミリを締め付けた。


「残念だが、俺にはどうすることもできねぇ」


そうして、リヴァイもあえてエミリから距離をとる。ペトラが何故、あのようにエミリを突き放したのか。その意味も理解できるから。
この問題に、他の者は干渉してはならない。


「明日の朝、牢を開けにエルドとグンタをここに来させる。とりあえずお前は残りの始末書を片付けておけ。ペトラとの件は、その後に考えろ」


まずはやるべき事を終わらせるのが先だ。考える時間は、いくらでもある。リヴァイの手伝いといっても、この三日間と比べたら、時間にかなり余裕ができるはずだ。
壁に背を預けていたリヴァイは、「じゃあな」とぶっきらぼうに言い残し、独房を後にした。


リヴァイが居なくなり、また一人だけの空間に戻る。長い溜息を吐いたエミリは、始末書を片付けるべく席に着いて筆を握った。
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