Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第23章 親友
「俺の手伝い、だとよ」
面倒くさそうな表情で溜息を吐きながら発せられたその事実に、エミリは耳を疑った。そして、すぐに納得する。
リヴァイの片手には、まだ松葉杖があるのだ。怪我が治っていない証拠である。足を銃で撃ち抜かれたのだから、そう簡単に完治されないのは当然のことだ。
「仕事だけでなく、私生活の手伝いも含むらしい」
「そう、なんですね……」
申し訳なさげに眉を下げるエミリは、相変わらず自責の念に駆られているらしい。
しかし、エルヴィンがわざわざそのような罰をエミリに与えた本当の理由に、リヴァイは気づいている。エミリをリヴァイの元へ寄越すことで面白がっているのだ。
(ったく、余計な世話かけやがって……)
エミリに聞こえぬよう舌打ちを鳴らす。相変わらずエルヴィンに遊ばれているのが気に食わないが、ある意味これは都合が良いのだ。それは、自分にとって、という意味ではない。
「お前は暫く、俺の自室の隣にある空き部屋で寝泊まりだ。どうせ、ペトラともまだ喧嘩したままなんだろ」
そう、三日前、エミリを突き放す形でペトラと喧嘩になった。顔を俯かせる彼女の反応を見る限り、仲直りはまだできていないのだろう。
普段は仲が良く、お互いを高め合いながら兵士として絆を深めていた二人。入団した頃のことをリヴァイは詳しく知らないが、このように長い間口を利いていないという状態は、おそらく初めてなのではないだろうか。
だからこそ、このタイミングで下手に二人をくっつけてしまえば、余計に関係が悪化するだけだ。お互い、時間を置いて考えをまとめるのがベストだろう。そういった意味でエミリが別の部屋に移るのは、正解なのかもしれない。