Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
リヴァイとこれからのことについて談笑していると、いつの間にか兵舎が見えてきた。楽しい時間ほど過ぎるのが早いと言うが、全くその通りである。
兵舎に距離が近づくにつれはっきりと見えてくるのは、兵舎の門。そして、次に目に入ったのは二つの人影。
「……あっ、あれは」
その正体は、大切な親友たち。ペトラとアメリだった。
視線に気づいたアメリが、エミリとリヴァイの方へ向き直る。それにつられて、ペトラもそちらへ振り向いた……のだが、気まづそうにすぐに視線を逸らしてしまった。
ペトラのその行動の意味を理解したエミリは、チクリと胸が痛むのを感じながら二人の元へ駆け寄る。
「アメリ、ペトラ……!」
「エミリ、元気そうだね! よかった……もう、心配したんだからね」
「うん、ごめん……」
両手を腰にあて、苦笑を浮かべるアメリに小さな声で謝る。きっと、アメリもこの騒動を聞きつけて、わざわざ調査兵団の兵舎にまで出向いてくれたのだろう。彼女には訓練兵時代の頃から、心配をかけてばかりだ。
次に、エミリの視線はペトラへ注がれる。未だに目を合わせようとしないペトラに、少しの違和感を感じた。何と声をかけて良いのかわからず、口をパクパクさせる。
「ペトラ、あの……」
「知らない」
「えっ」
「エミリなんて、知らないっ!!」
「ペトラ……? あっ」
低い声で声を上げたペトラの目には、涙が溜まっていた。それに気づいたエミリの頭に、鈍器で殴られたような衝撃が襲う。
涙の理由なんて、聞かなくてもわかる。瞳が語っていた。「どうして、頼ってくれなかったの?」と。
「エミリのバカ……わたし、しばらくエミリと会いたくない!!」
そう言い放ち、エミリから背を向けて兵舎の中へ駆けて行くペトラ。何が起きたのか、状況を正しく認識できていなかったエミリは、それに素早く反応できなかった。