Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
──だから……俺はなろう。
「……そう、ですか」
人の親になれるわけがねぇと、ずっと思っていた。
正直、本当になれると思っちゃいねぇ。だが、
「リヴァイ兵長がそう言うなら、私、なれる気がします!」
お前が居てくれるなら、俺は、なれる気がする。
あいつらの、父親に……────
「なあ、エミリ」
「はい?」
不安から気合いのこもった瞳を携え、そこにリヴァイを映すエミリには、彼女のチャームポイントでもある明るい笑顔が乗せられている。
そんな想い人の頭に手を乗せ、ポンポンと撫でてやれば、不思議そうにリヴァイを見上げていた。
「あの、兵長……?」
「お前の夢、俺がいつか叶えてやる」
「……えっ、それどういう意味ですか??」
どうやら、リヴァイの言葉の意味をちゃんと理解できなかったらしく、眉間に皺を寄せて必死に考え込んでいる。
(……今は、それでいい)
いつか、想いが通じ合い、永遠を誓うことができたなら、平和になった世界で、"母親になりたい"という彼女の夢を……────
「帰るぞ」
「えっ!? あの、さっきのどういう意味なんですか?」
「自分で考えろ。バカが」
「ちょ、バカって……何なんですか!! もう!!」
ポカポカと軽く肩を叩いては声を上げるエミリの額を指で弾き、兵舎に向けて再び歩く。足は怪我をしているというのに、なぜか体が軽い。それは、エミリの存在があるからだろう。
この先も、ずっと彼女を見守り、そして守っていきたい。兵士長としても、彼女に想いを寄せるひとりの男としても。