Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
温かい日差しを浴び、空を見上げるエミリの姿は、なんだかとても逞しい。リヴァイからは、そんな風に見えた。
(俺からすりゃあ、お前は、とっくに……)
あんなに傷ついても、膝をついても、倒れても……命懸けで子どもたちを救ったエミリは、十分、母親同然のようにも思う。
(わからねぇな。女ってのは……)
特にエミリのような直情バカは、今までリヴァイが見てきたどのタイプの女とも違う。
弱いくせに人を頼ることを知らない、命知らず、隠し事が苦手なくせにとんだ頑固者で、すぐ熱くなる。どれだけ死に急げば気が済むのだろう。
これまでのことを思い返せば、とてもじゃないがエミリひとりにルルたちのことを任せられない。それならば……────
「……俺は、」
咄嗟に浮かんだ案、しかし、その先が音になることはなかった。本当になれるのかと、疑問に感じてしまったからだ。
「リヴァイ兵長……」
「……なんだ?」
「私、母親ってまだよくわからないんです。お腹の中にいるときの育て方も、産む時の痛みも、子育ての大変さも知らないから……。
でも、本物はムリでも、あの子たちの母親代わりになりたい。なれると、思いますか?」
少し不安げに揺れるエミリの瞳は、真っ直ぐとリヴァイを捉えている。
「……ああ、なれる。お前なら」
子どもたちのために、あそこまで命を懸けることができたのだ。きっと、なれるだろう。
そして、リヴァイ自身も、そんなエミリの隣で一緒に子どもたちを守っていきたい。