Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
真っ青な空の下、病院を後にしたエミリは、リヴァイと並んで兵舎への道を歩く。
まだ少しだけ、体も痛い。それなのに、こんなにも気分が晴れやかなのは、きっと元気な子どもたちの姿を目にすることができたから。
「……兵長」
立ち止まって、太陽を見上げながら、松葉杖に体を預けながら歩くリヴァイへ声をかける。
「私の、一番最初の夢……薬剤師じゃなかったみたいです」
「あ?」
突然、何を言い出すのかと思えば、今までであんなにも迷い、悩みながら薬剤師を目指して勉強してきたエミリから発せられたとんでもない発言に、思わずリヴァイは面食らう。
「……私、お母さんになりたかったらしいんです。私の、母さんみたいな」
何故、そんな話を始めたのだろうか。
太陽を見上げ続けるエミリの横顔を眺めながら、彼女の話に静かに耳を傾ける。
「でも、私は兵士で……母親になんて、なりたくてもなれません」
「…………」
「そんな私の夢を、ルルたちが叶えてくれました」
ルルの病室を出たあと、他の子どもたちとも面会した。
笑顔が溢れる病室、元気な子どもたちの姿にまた涙が溢れてしまったのは、言うまでもなかった。
エミリなりに解釈した、"愛しい"の意味。それはきっと、"守りたい"という思いから溢れ出るものなのだろうと、少なくともそんな答えが出た。
「私、これからもなろうと思います。あの子たちの、お母さんに」
知りたいと思った。自分が憧れ、夢見たカルラの母親としての世界を、感じたいと思ったのだ。
そして、ルルたちの母親になり続けること。それがきっと、夢を叶えた先にあるものだと直感した。