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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第6章 答え



暫く声を上げて泣いていると、リノがエミリの顔に擦り寄る。
『泣かないで』と言っているようだ。
それを感じ取ったのか、エミリは顔を上げて今度は彼女がリノへ顔を寄せる。


「……リノ」


小さな声は、静かな夜の世界へすっ……と溶けるように消えて行く。


「ごめんね、心配かけて……」


涙で濡れた顔で微笑みリノに声を掛けると、リノはまた、壁外でやったようにエミリの頬をぺろりと舐める。
エミリは、『もう大丈夫』と意味を込めてリノの頭を優しく撫でる。そして、ゆっくりと口を開いた。


「……ねぇ、リノ。私ね、巨人に母さんを殺されたあの日から、ずっと巨人が憎くて仕方が無かったの」


大好きな母親の笑顔を思い浮かべ、語り始める。


「……父さんもまだ行方不明なままでね、生きている確率の方が低いって……。私たち家族は……バラバラになっちゃったんだ」


父さんは聡明な人で、いつも私達の考えや気持ちを理解してくれた。
母さんは優しい人で、いつも私達のことを思ってくれていた。

私が泣いた時はいつも抱き締めてくれた。
間違った時はいつも本気で叱ってくれた。
無茶をした時はいつも心配してくれた。

いつも私達に、沢山の愛情を注いでくれた。


「みんなでご飯食べたり、笑い合ったり……そんな、あの頃に戻れないって思うと、悔しくて……やるせなかった……」


温かくて、大切な日常すらも巨人に奪われた。
それがとてつもなく憎らしかった。


「やっと、調査兵団に入って、巨人と戦えるって思ったけど……でも、そこにはまた、絶望があって……」


死にゆく仲間達を実際に目の当たりにし、改めて壁外の恐ろしさと残酷な世界に目の前が真っ暗になった。


「やっぱり、巨人は憎くて……だから、根絶やしにしてやりたいって思ったの。……だけどね、それだけじゃ駄目だって、いま、やっと気づいたよ」


そう言って、エミリは瞼を閉じる。

思い出すのは、幼い頃の記憶の欠片。
エミリがフィデリオとケンカして家に帰った時のこと。
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