Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第6章 答え
空を見上げ立っていたのは、エミリと彼女の愛馬であるリノだった。
まだ紺色の空を目に映しているせいか、琥珀色の瞳はいつもよりも暗く儚げに見える。
(……あいつ、あんな所で何してやがる)
意外な人物の正体にリヴァイは思わず足を止めた。
エミリは風に靡く横髪を耳に引っ掛ける。
脳裏に浮かぶのは、同期や先輩達と過ごした記憶。そして、彼らの遺体。
走馬灯の様に流れたそれに胸が張り裂けそうになったエミリは、とうとう我慢が出来なくなった。
「……う、うぅっ……! うああぁぁ……!」
堪えきれなくなり、その場にしゃがみ込んだエミリは、堰を切ったように号泣し始めた。
分かっていたつもりだった。
調査兵団に入れば、悲しみや絶望の連鎖であるということを……
でも、それは"つもり"に過ぎなかった。
あの日、カルラを失った時と同じ苦しみが押し寄せる。
辛くて、辛くて、仕方が無かった。
泣き喚くエミリを見ていたリヴァイは、部下を咎めにここへ来たことを忘れ、涙を流し続ける彼女をただ黙って見ていた。
リヴァイは知っていた。
死体を回収する時も、火葬を行った時も、エミリが涙を流していなかったことを……。
今の彼女と同じように泣いていた同期達の背中を摩ったり、優しく言葉を掛けたりと、自分よりも友人達の方を気にかけていたということも。
全部、見ていた。
だから、何も言おうとは思わなかった。
気の済むまで泣かせてやりたいと思った。