• テキストサイズ

Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第6章 答え


空を見上げ立っていたのは、エミリと彼女の愛馬であるリノだった。

まだ紺色の空を目に映しているせいか、琥珀色の瞳はいつもよりも暗く儚げに見える。


(……あいつ、あんな所で何してやがる)


意外な人物の正体にリヴァイは思わず足を止めた。


エミリは風に靡く横髪を耳に引っ掛ける。

脳裏に浮かぶのは、同期や先輩達と過ごした記憶。そして、彼らの遺体。

走馬灯の様に流れたそれに胸が張り裂けそうになったエミリは、とうとう我慢が出来なくなった。


「……う、うぅっ……! うああぁぁ……!」


堪えきれなくなり、その場にしゃがみ込んだエミリは、堰を切ったように号泣し始めた。

分かっていたつもりだった。
調査兵団に入れば、悲しみや絶望の連鎖であるということを……

でも、それは"つもり"に過ぎなかった。

あの日、カルラを失った時と同じ苦しみが押し寄せる。

辛くて、辛くて、仕方が無かった。



泣き喚くエミリを見ていたリヴァイは、部下を咎めにここへ来たことを忘れ、涙を流し続ける彼女をただ黙って見ていた。

リヴァイは知っていた。

死体を回収する時も、火葬を行った時も、エミリが涙を流していなかったことを……。
今の彼女と同じように泣いていた同期達の背中を摩ったり、優しく言葉を掛けたりと、自分よりも友人達の方を気にかけていたということも。

全部、見ていた。
だから、何も言おうとは思わなかった。

気の済むまで泣かせてやりたいと思った。

/ 727ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp