Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
布団から顔を出せばピタリと視線が絡み合う。再び頬に熱が一気に集まり、それを見られたくなくてリヴァイから背を向けた。
「……兵長、いつ起きたんですか……?」
「あ? 今起きたばかりに決まってんだろ」
その返答にホッと胸を撫で下ろす。布団の中で悶々としていた様子なんかを観察されていたらと思うと、更に恥ずかしくて顔向けできない。
「それより、なんでこっち向かねぇ。まさか、昨日のことまだ怒っているのか」
「べ、別にそういうわけじゃないです……ただ、お、女の子には、色々とあるんです!!」
「はあ?」
理由として成り立ってはいないが、こう言っておけば大抵の事は誤魔化せるだろうと話を強制的に終わらせる。
そうでもしなければ、自分の心の動揺がリヴァイに伝わってしまうようで、少しだけ不安だったのだ。
「……まあいい。それよりエミリ、出かける支度をしろ」
「え?」
よくわからないことを考えても仕方がないと、思考を切り替えたリヴァイの発言に、今度はエミリが疑問符を浮かべる番だった。
「出かけるって……何処に?」
「ガキ共の所に決まってんだろう」
「え……会えるん、ですか?」
「お前が目を覚ましたら、病院へ連れて来るよう言われていた」
ベッドから降り、松葉杖を手にしたリヴァイは、ソファの上に置いてあった包をエミリへ手渡す。
「お前が眠っている間、ペトラに持って来させたお前の服だ。さっさと脱衣所でこれに着替えて来い」
「ペトラが、ですか……わかりました」
包を受け取り、言われるがままリヴァイの部屋に設置されている脱衣所へ移動する。
パタリ、と扉を閉めた後、ズルズルと背中に扉を引っ付けたまま、床へ座り込む。
隣の部屋にリヴァイはいるが、やっと一人になれた気がして少しホッとしたのだ。
子どもたちを救出するための作戦を考えていた期間は、ほとんど一人で過ごす時の方が多く、不安さえ感じていた。しかし、今はその逆、リヴァイたちがそばに居ると、巻き込んでしまった罪悪感に気まづさが渦巻いてばかりだった。
全く、都合の良い話である。
(そう言えば、まだペトラとアメリと会えてないな)
ずっと心配して待っていてくれたであろう親友たちの顔を思い浮かべる。後でちゃんと会って謝らなければ。
溜息を一つ吐き、着替えを始めた。