Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第6章 答え
「……チッ」
静かな執務室で、リヴァイは一つ舌打ちをした。
机には大量の書類。うんざりして紅茶を飲んでいたがやはり気分は静まらない。
今回の壁外遠征でも多くの犠牲を伴った。
リヴァイの班員も一人、命を落とした者がいた。
調査兵団に入団してから約三年、その間に何度も壁の外に出たが、帰還した日の夜はやはり胸糞が悪い。
こればかりは何度経験しても慣れないし、慣れようとも思わなかった。
ふと、窓の外へ視線を移す。
「!」
馬小屋から誰かが出てくるのを目で捉えた。外もまだ暗く、距離もあるためはっきりとは見えないが、おそらく馬も一緒だ。
(……こんな時間に何してる)
気になったリヴァイは、ティーカップを机に置いて執務室を出た。
この時間帯はまだ肌寒く、薄着で出るには厳しい気温だった。けれど、まだ兵服で仕事をしていたリヴァイは上にジャケットを羽織っているため問題は無い。
調査後は、着替えや風呂に入る時間も惜しいほど書類に追われる。
潔癖症である彼からすればそれが出来ないということはかなり大問題だが、それに苛立ちを感じている暇があるのなら少しでも書類を片付けたい。
それなのに、こんな時間に動き回っている奴は誰だとまた舌打ちをして馬小屋へ向かった。
また兵団を抜け出す奴が出たか。
いや、それなら何故馬小屋に?
馬を使って逃げるつもりなのか。
「……クソ」
書類に追われ、着替えも入浴も出来ないというこの状況だけで参っているというのに、部下の面倒や規律も上官である彼らがしっかりとしなくてはならない。
兵団から抜け出すような覚悟のない者は放っておけば良いとは思うが、部下の管理も立派な上官の仕事の一つだ。
馬小屋に到着すると、出入口の前に足跡が残されていた。
土が湿っているため、それははっきりと行先を示している。リヴァイはその足跡を辿って歩いた。
少し歩くと樹木が生い茂る道へと続いていた。
更に足跡を辿れば、その正体が判明した。