Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
「さて、邪魔者は君だけだ」
ルルを蹴り飛ばしても相変わらず平然とした様子を見せるオドの態度と言葉。
それは、完全にエミリの堪忍袋の緒を切らせた。
「…………ふざ、けんな……」
散々、自分の勝手な都合で子どもたちを巻き込んでおいて、不必要になった途端に邪魔者呼ばわり。更には、傷つけることすら躊躇わない。
完全にルルたちを道具として扱っていることが、彼の態度からわかる。
「そんなに僕が許せないなら、止めればいいじゃないか。君にそれができるのなら、だけどね……!!」
「エミリ! 後ろ!!」
オドの発言直後、リヴァイから発せられる危険信号にすかさずオドから距離を取る。
彼が振り下ろしたのは槍だった。
エミリが放心している間か、いつの間にそんなものを手にしていたのか。
そんなことを考えている場合ではない。
次々と乱暴に突きつけられる槍、それをかわしながら打開策を探す。
「いつまでそうしていられるだろうね!!」
普段であれば、こんなもの両手で受け止めてお終いである。しかし、さっきオドから与えられたダメージがあまりにも体に響いているらしく、思うように力が出せなかった。
そんな時、目の端で捉えた武器にエミリは意識を逸らされる。そして、それを手にするためにオドの攻撃を避けながら武器を取れる間合いまで誘導した。
「避けてばかりじゃ、解決しないよ!」
「そんなの、あんたよりもわかっているわよ!!」
顔の位置へ真横に振られた槍をしゃがんでかわし、エミリは目的のものを手に取った。
「はあああ!!」
その瞬間、勢いをつけて斧を槍の持ち手に向けて振り上げる。
バキッと棒が折れる音が、ダイレクトに響いた。武器を失ったオドは、ようやくそこで困惑の表情を見せる。エミリはその隙をついて、再び斧を振り上げた。
狙った部位は、オドの手首。宙を彷徨う彼の腕目掛けて、真上から斧を振りかざした。
「う、がっ……ああああああ!!」
離れた手首が地面に落ちる。切断された部位からは、鮮血が吹き出し地面を真っ赤に染めていく。
そんな中オドの絶叫が空間を埋め、エミリたちの鼓膜にキン……と嫌な音が入り込んだ。