Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第6章 答え
「……ん」
夜、皆が寝静まった頃にエミリは目を覚ました。
状態を起こし、周りを見回すも部屋は真っ暗で何も見えない。
ぼんやりとした意識の中、壁の中へ帰ってきた時のことを思い出す。
兵団本部へ戻った後は、とにかく大変だった。
重症の者は病院へ搬送し、軽傷ですんだ者は新兵や一般兵士が手当をした。上官らは各々、自身の役職の仕事に手一杯という様子だった。
そして夜は、遺体を焼却するため火葬が行われた。
火を囲み、兵士達は皆涙を流し弔っていたが、エミリはただただ揺れる炎を眺めていただけだった。
時には、声を上げて涙を流し続ける友人達の肩をさすってやったり、声を掛けたり……
それでも、心を支配するのは悲しみではなく虚無感だった。
自由になりたいだけなのに、ただそれだけなのに、どうしてそれを夢見るだけで、叶えようとするだけで、こんなにも呆気なく人は死ななければならないのだろう。
その日、エミリは涙を流すこと無く一日を終えた。
同じ部屋の同期達は、泣き疲れたのかスヤスヤと眠っていた。その寝息が幾つか減っていることに、また虚しさを感じた。
エミリはベッドから降り、時計を確認する。短針が4を指していることから、まだ明け方ということが分かった。
けれど、二度寝する気にもなれず、上着を羽織ったエミリは音を立てないよう、静かに部屋を出た。