Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
「兵長……しっかりしてください……!!」
自分にもたれ掛かるリヴァイを支えながら、重たい彼の体をゆっくりと起きあげる。手を放そうとすれば、今にも崩れ落ちそうなほどに、薬はリヴァイの体を支配していた。
「クソっ……」
殺意が湧くほどにオドを憎いと感じる。
結果的にエミリを守れたわけだが、それすらもオドの思惑通り。さらには、想いを寄せる女に支えられているという状況に、情けなさすら思える。
何とか自力でバランスを保とうにも、薬の効果には勝てなかった。
「それでいいです。そこでジッと待っていて下さい。まだ実験も途中ですので」
そう言い残し、ルルを連れて研究室へ戻ろうと足を進めるオドと研究員。
再びエミリに焦りが生じる。
薬を盛られ、動けない状態であるリヴァイを放っておくことなどできない。
しかし、このままではルルがまた利用されてしまう。あの状態で更に実験を受ければ、ルルの命はどうなるか。
わざわざ考えなくとも、結果は見える。
「……兵長、ごめんなさい」
リヴァイを地面に寝かし、エミリはルルを取り返すために駆け出す。
「ま、て……! エミリ!!」
また無謀にも奴らに突っ込んでいくエミリの後ろ姿に声を掛けるも、ルルを助けることに必死な彼女には届かない。
嫌な予感がした。
このままエミリを行かせては危険だと、勘が働いている。後を追いたいのにそれができない。
言うことを聞かない自分の体に苛立ちが募る。
「ルルを放して……!!」
オドの背中に向かって勢い良く飛びつこうとするエミリ。
そんな彼女の声を耳に入れたオドは、ニヤリと口角を上げた。
「また、かかったね」
小さな呟きの直後、オドがエミリの方へ振り向いたと同時に彼の手から何かが放たれる。
弧を描くのは、小さな球体。それがエミリの足元で弾け、煙を上げた。