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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第21章 黒幕


虚ろとした眼差しを携え、肩で大きく呼吸を繰り返すエミリ。そんな彼女の火照った体を、リヴァイは優しく抱き締め、唇を耳元へ寄せた。


「落ち着け、エミリ。大丈夫だ。まだルルは死んでねぇ」


取り乱した彼女の心ごと抱き締めるかのように、エミリの頭に手を置いて、滑らせるように優しく撫でてやる。

酸素を求めて荒い呼吸を繰り返していたエミリのそれも、段々と緩やかになっていた。


「へ、ちょ……わ、たし……」

「何も考えるな」


また自己嫌悪に陥りそうなエミリにそうさせまいと先手を打つ。
そうすれば、嗚咽を漏らしながらリヴァイの胸に顔を埋め、体を震わせた。

エミリの体を支えながら、ゆっくりと地面に座らせる。
地面に丸く滲む雫は、葛藤や怒り、悔しさから現れたものなのだろう。エミリの気持ちを吸い取っているかのように幾つも零れ落ちる。

妙に静かな時間。まるで、リヴァイとエミリ、二人だけの時が流れているようにも感じるほど、緩やかで穏やかに感じた。


パチ パチ パチ


しかし、拍手という爆音でその世界を壊すのは、さっきよりも笑みを濃くした研究員であった。


「いやあ、熱いですねぇ。久々に良いものを見せて頂いた気分です」

「あ? 黙れ、ゲス野郎が……」

「そのお嬢さんの声、なかなか来るものがありましたよ? なんならうちで雇いましょうか?」

「うるせぇ。それ以上その汚ぇ口開くようなら削ぐぞ」


完全にエミリをそういう目で見ている研究員にふつふつと怒りが沸き上がる。

リヴァイに睨みつけられても、相変わらず「おーこわいコワイ」と肩を竦ませる研究員の態度が、心底気に食わなかった。


「…………そんな……ことより、」


顔を俯かせながら、絞り出す声を発するエミリ。二人の意識がそちらへ向いた。


「そんな、ことより……ルルを、離して……」


低く沈んだ声は、エミリの心情をはっきりと示していた。それでも立ち上がろうとしないのは、彼女が冷静になった証拠である。

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