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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第21章 黒幕




「と、言われましたもねぇ……他の子どもがいなくなってしまったからには、現在はこの子どもしか実験台が、」

「うるさい! ルルを……ルルたちを、実験台なんて言うな……!!」


研究員の言葉を遮ったその声は、部屋中に響き渡る。
エミリの怒りは、既に沸点を超えていた。

地面に置かれた手は拳となり、小刻みに震えている。本当は、手を出したくて仕方がないのだろう。
それでも、必死に耐えていた。

ルルを、助けるために。


「……困りましたねぇ。どうします? 先生」


"先生"に向けられた研究員の言葉に、エミリは顔を上げて彼と同じ方向を見据える。

研究員の後ろにある部屋の扉がゆっくりと開かれ、中から誰かが姿を現した。


「………………えっ」


その正体にエミリも、リヴァイも、息を止めてその人物を凝視する。


(……どう、して)


白衣のポケットに手を突っ込んで、笑みを湛える先生──オドの姿に、エミリは言葉を失った。


薬草園の開設に関する話をファティマの元で行った日に、初めて彼と対面した。
薬剤師として、医師として活躍を見せる彼は、エミリにとっても憧れの人物だった。

それが、いま、エミリたちの目の前で、意味深な笑みを浮かべて立っている。
その現実は、信じ難いものだった。


「どう、して……」



──助けるために身につけたこの知識や技術をこの先も使っていきたいと思っているんだ。その為に僕は、医師と薬剤師、両方の資格を取得したんだ。



「……そう、言ってたのに」



──……エミリ、同じ志しを持つもの同士、お互い頑張ろうね。



「なんで、よりにもよって……あなたが……こんなこと」


尊敬していたのに
貴方のように、誰かを助けられるような先生になりたいと思っていたのに

なのに、何故……?


エミリの中から、オドという先生像が崩れ去った。
裏切られたような気持ちとは、こういうことを言うのだろう。

そんなエミリたちの戸惑いなど気にしないといった様子で、オドは笑みを湛えたまま口を開く。


「久しぶりだね、エミリ」


穏やかなその声は、まるで、悪魔のように不吉な囁きだった。
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