Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第21章 黒幕
背後から感じた気配にリヴァイは、地面を蹴り瞬時に飛んできた何かを躱す。
着地した直後、顔を上げ物体を確認すれば、目に映るのは壁に刺さった一本の矢。
これは明らかにリヴァイを狙って放たれたものだろう。矢が襲いかかってきた方向に警戒を強め、手にナイフを持つ。
「ったく、外れたか……」
コツコツと鳴り響く複数の靴音にリヴァイは、少し腰を落とし臨戦態勢に入る。
どうやら、相手は一人では無いらしい。
「あんたか? ガキを逃がした愚かモンは」
「…………」
姿を現したのは、左目に大きな切り傷を残したスキンヘッドの男。彼の周りには、下っ端らしき数十人の男が見えた。
「困るんだよ……あのガキどもが居なきゃ、俺たちゃ金が稼げねぇんだよなァ。あいつらは、俺たちの商売道具だからよォ」
片手で頭を抱えてはやれやれと首を振る男だが、その口元にはしっかりと笑みが乗せられていた。
「で、あんた……どう責任取るつもりだ?」
「責任?」
「当然だろう? あんだけのガキを逃がしたんだ……代わりにお前さんが、実験台になってくれんのか?
ナーンてな……ガキが逃げたことはもう仕方ねぇ。また地下街から幾つか連れて来りゃあいい。ただ、このままあんたを逃がすとなれば、こっちの首が飛ぶんでなァ……」
ナイフや銃、弓矢をリヴァイに向ける奴隷商人たち。リヴァイを取り囲み、完全に逃げ道を塞いでいた。
しかし、それでもリヴァイが動じることはない。敵が何人いようが、ただ武器を闇雲に扱う商人など3メートル級の巨人一体にも満たない相手である。
一斉に銃弾と矢を放つ商人たちの攻撃を、立体機動を駆使して避ける。
「ッッ!? あれはっ……立体機動装置!?」
「なんであいつが……!!」
流石にリヴァイが立体機動を装着しているなどとは思っていなかった商人たちは、信じられないものを見る目でリヴァイの姿を追う。
呆然とする商人たちに出来た隙。リヴァイはそれを逃さない。
アンカーを噴射し、体を捻って天井を見上げる商人の一人の顔面に蹴りをお見舞いする。
「あの動き……憲兵じゃねぇ……!?」
リーダーであるスキンヘッドの男が、冷や汗を一筋流し部下に告げる。
ざわめく商人たちだが、返ってリヴァイには好都合。彼らの混乱を好機と捉え、リヴァイは商人たちを薙ぎ倒していった。