Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第21章 黒幕
ぽかんと口を開けては、フィデリオとオルオを見上げる破天荒女にオルオは腹の底から声を張り上げる。
「おい!! 何ぼーっとしてんだドアホ!!」
「ちょ、何なのよ! さっきから馬鹿とかアホとか……」
「本当のこと言ってるだけだろうが!!」
確かにバカであることは認める。だが、何度もそう、バカと言われると言い返したくもなる。
オルオも色々と思うことがあったのだろう。エミリに対して、不満も怒りも大きいはずだ。それでも、こうして来てくれたのだから、文句など言えない。
「お前のせいでどんだけ周りに心配かけたか。もっと自覚しろ」
「それは……本当にごめん」
オルオの圧力に気をされ、エミリは肩をすくませる。
「まあ、オルオ。一旦落ち着け」
「気持ちは分からなくもないが、今は言い合っている場合じゃない」
そこに加わった2人の男性の声。それは、リヴァイ班の先輩である、エルドとグンタだった。
まさかこの2人までもが来てくれているとは思わず、エミリは目を丸くさせる。
「どうして、お二人まで……」
「壁外調査と関係ないとはいえ、兵長が戦っているんだ」
「リヴァイ班の一員として来るのは当然だろう」
いつものように力強く優しい笑みを浮かべて、オルオとフィデリオの隣に並ぶ精鋭の二人。彼らがエミリを咎めることはなかった。
きっと、心の中では様々な感情が渦巻いているはずだ。それなのに何も言わないのは、エミリの気持ちも理解しているからなのかもしれない。
「子ども達を森の外へ連れていくんだろう?」
「俺達も協力しよう」
そう言って、子ども達を抱き上げるエルド達。オルオも渋々といった様子で、子ども達のそばへ歩み寄る。
4人が助太刀に来てくれたおかげで、早く森を突破できそうだ。
子ども達を抱えたエミリたちは、森の入り口に向かって全速力で走った。
「そういえば、ペトラは……?」
彼らと同じリヴァイ班である親友の姿が見えず、エミリは首を傾ける。