Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第21章 黒幕
子どもたちを引き連れ、エミリは森の中を走る。
まだ幼く、ずっと檻の中に監禁されていた子どもたちは、走ることすらと精一杯らしく、一向に森の出口への距離は縮まらない。
追っ手が来ないことを祈り、3歳ほどの子どもを二人抱き上げ、残りの子どもたちには声をかけながら、とにかく出口を目指す。
「皆、頑張って!!」
膝に手を添えて荒い呼吸を整える子どもたちは、息苦しさから顔が赤くなっている。
流石に休ませた方がいいだろうか。しかし、エミリとリヴァイの侵入に気づいていたとしたら……
そのような事を考えると、うかうかしていられない。
「……もう、だめ……」
地面に座り込み、涙を流す女の子。それに釣られ他の子どもたちもわんわんと泣き出してしまった。
苦しさは理解できる。子どもたちが、今、どれだけ恐怖を感じているのかも……それでも、エミリは言葉を掛け続ける。
「皆! ルルが、何のために自分から掴まったと思ってるの? 皆に元気で居てほしいからなんだよ?」
子どもたちの視線に合わせてしゃがみ込み、必死に気持ちを伝える。
「ルルは、今、皆のために頑張ってくれているの。なのに、皆は頑張らなくていいの?」
諦めて欲しくない。
ルルの気持ちを無駄にしないためにも、そして、子どもたち自身の未来のためにも……
「諦めちゃだめ。進もう、前に……!!」
エミリの強い叱責に子どもたちの目の色が変わった。
うん、とそれぞれが頷き、ふらふらとした足取りで立ち上がる。
ずっと檻の中で、死を覚悟し恐怖を感じ続けていただけのことはある。精神力が鍛えられたのだろう。
(強い子たち……)
エミリの後ろを、必死に足を動かして着いてくる子どもたちの姿に、エミリは優しく微笑んだ。
これからも、今のように前を向いて未来を生きてほしい。だから、必ず助けなければならない。
(……兵長、どうかお願いします)
今、ルルを任せられるのは、リヴァイだけ。その代わり託された子どもたち。
必ず守ると誓ってエミリは走り続ける。