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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第21章 黒幕


調査兵団の兵舎。そのある一室で、窓から月を見上げるペトラは、胸元で祈るように両手を組み、親友の帰りを待っていた。

慌ただしく出て行ったハンジたちは、王都に着いたのだろうか。そのようなことを考えながら、何度目かわからない溜息を吐く。



数時間前、エミリの部屋から見つけ出した資料を机に広げ、事件の対処や救出した子どもたちの今後について話し合っていた。

その結果、エルヴィンは、憲兵団へ向かいナイルに事情を説明。
ミケ班は、ファティマと医者に呼び掛け子どもたちの診察を依頼。
ハンジ班とリヴァイ班は、エミリとリヴァイの後を追うということで各自動きが決まった。

しかし、ペトラはその中に組み込まれていない。なぜなら、兵舎に残ると断ったからだ。


理由は、エミリに待っていてほしいと言われたから。
信じて待つ、と決めたから。


「狡いよ、エミリ。あんな言い方……」


何もさせてくれない。
何もせずに待っていて欲しい。

それが、どれだけもどかしくて、辛いことなのか……。
エミリは、きっとそれをわかっていてペトラにそのようなことを聞き、そして、答えさせたのだろう。


「……帰って来なかったら、絶交なんだから」


どこまでも勝手で、そして、とてつもなく馬鹿な親友へ不満を零す。


そんな時、コンコンとノックの音が部屋の中へ響いた。
一体誰だろうと不思議に思いながら、扉を開く。そこに立っていたのは、腕にヴァルトを乗せたアメリの姿だった。


「アメリ、どうして……」

「フィデリオからヴァルトを通して知らされたの。エミリのこと。ペトラ、今頃一人かなって思って、外出許可もらって来ちゃった!」

「……ありがとう」


心強い人物が駆けつけてくれたことに安堵したペトラは、アメリを部屋へ招き入れる。
不安な夜を一人で過ごすのは、とても落ち着かないため丁度よかった。


「大丈夫、エミリならきっと帰って来るよ」

「……うん」


手を繋いで、アメリと共に再び月を見上げる。
少しだけ安心したせいか、さっきと比べて月の光が明るく輝いて見えた。
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