Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第20章 約束
拳をリヴァイに向けて振り上げるエミリ。しかし、リヴァイはそんな彼女の拳を難なく片手で受け止め、そのままエミリを地面に叩きつける。
「ぐっ……」
背中に走る痛みと衝撃に鈍い声を上げるも、すぐに起き上がったエミリは、今度は回し蹴りを食らわせるために足を振り上げる。
しかし、それもリヴァイは涼しい顔で受け止め、再び地面へ叩きつけた。
「……うっ……」
「動きがパターン化している。そんな単純な動きで、俺を倒せると思ってんのか」
「…………思って、ませんよ……!」
そんなことくらいわかっている。
リヴァイに対し、正面から突っ込んで行っても勝ち目なんてあるわけが無い。
裏をかいての攻撃が必要だ。しかし、リヴァイにそんな隙を与えられるのだろうか。
戦闘能力がとてつもなく高い上に、経験値すら何十倍もリヴァイの方が上なのだ。そのような相手にエミリの力で対応するのは、不可能に近い。
思えば、リヴァイとこうして手合わせするのは、これが初めてだ。
たまに訓練で部下の特訓に付き合っている姿を見るが、エミリがリヴァイに特訓をお願いすることは無かった
つまり、相手の攻撃パターンすらもわからない。
(だったら……)
立ち上がったエミリは、再び拳を振り上げる。と見せかけ、ポケットに忍ばせておいた煙玉を地面に叩きつけた。
「っ!?」
さすがにリヴァイもそれは想定していなかったのか、視界に広がる灰色の煙に目を細める。
そこにできた僅かな隙。正面から右側に移動していたエミリは、もう一度拳を握りリヴァイに向かって突っ込んでいく。
(今度こそ……!!)
倒すことはできなくても、せめて一発くらい入れてやる。そう意気込んでリヴァイに接近した。
しかし、リヴァイの鋭い視線はエミリを捉えた。
「ッッ!!」
その瞬間、突き出した拳はまたもやリヴァイに受け止められる。そのまま腕を捕まれ勢いよく引っ張られた。エミリの体は宙を舞い、気づけば激しい痛みと共に地面に寝転がっていた。
リヴァイの背負い投げをもろに受けたエミリは思った。
やはり、この人には適わないと……