Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第20章 約束
何をしようと……人間を殺す危険性があると危惧しているのだろうか。
確かに、人を殺す目的ではないが、エミリはこの部屋に到達するまでに薬品を人間に対して使用した。
リヴァイが入ってきた扉は、エミリと同じ。つまり、リヴァイも裏口から入って来たことになる。ならば、廊下で倒れ眠っている研究員の姿を目撃したということになる。
そこから、エミリに対して何かしら不審を感じたのかもしれない。
「……別に、私は人を殺すつもりなんて、無いです……」
だけど、それはつもりにすぎない。もしかしたら、本当に手を汚さなければならない時が、来るかもしれない。
弟のエレンが、ミカサを助けるために人間に刃を向けたのと同じように……
「そういう心配をしてるんじゃねぇよ」
しかし、エミリの回答は違っていたようだ。
言っていることが理解できていないエミリに対し、リヴァイは呆れた顔でエミリを凝視する。
「こいつらを助けるため自分を犠牲に……なんて、考えてるんじゃねぇだろうな?」
核心をついたリヴァイの言葉。エミリの心臓は大きく音を鳴らした。
「馬鹿野郎。自己犠牲が、現実で美談になるわけがねぇだろ」
「……わかってますよ。そんなことくらい」
「いいや、わかってねぇ」
「わかってます……!!」
「わかってねぇよ。だから、今すぐこんな馬鹿げたマネは止めろ」
強い口調でエミリを止めようと試みるリヴァイ。それに対し、エミリも自分の意思を貫くために声を荒らげては、リヴァイに反抗する。
こうして、兵士長である彼に反抗する時が来るなど、思っていなかった。
上司の命令は、絶対だろう。しかし、今のエミリにとってはそんなもの関係ないのだ。
「じゃあ、他にどうしろって言うんですか……? この子たちをこのまま放って行けって言うんですか!?」
「そうじゃねぇよ」
「なら、そこを通して下さい!! 私は、約束したんです……必ず助けるって……」
「待て、エミリ。他にまだガキがいるのか?」
もし、この場にいる子どもたちで全員ならば、エミリがこの先へ進む理由はないはず。
そこに気づいたリヴァイは、エミリに再び問いかけた。