Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第20章 約束
聞きたいことが山ほどあるのに、驚きの方が勝って言葉が出なかった。
目の前に立つリヴァイは、本当に幻覚などではなく本物なのかと疑ってしまうほど、この状況が信じられない。
「そいつらが、お前が助けようとしているガキ共か………」
放心状態に近いエミリから、彼女の後ろに隠れている子どもたちに視線を移す。
リヴァイと目が合わさった子どもたちは、ビクリと体を揺らし、更に縮こまった。
「おねえちゃん……この人、だれ?」
「……え、あっ……リヴァイ兵長はね、私の上司で……」
「じょうしってなに?」
「えっと……」
子どもにわかりやすい説明すらできない。それほどにエミリの思考は麻痺しているようだ。
どう話すか悩んでいると、リヴァイが子どもたちの目線に合わせてしゃがみ込む。
「まあ、簡単に言やあ、俺はこの馬鹿の面倒見てるやつだ……」
「馬鹿って……」
説明が雑すぎると抗議をあげたい所だが、そんなことを言える立場でもないし、リヴァイの言う通り確かに馬鹿で間違いない。
「……兵長、どうしてここに? なんで、知ってるんですか……?」
子どもたちの存在を知っているということは、この研究所で行われている計画の内容も全て知っているのだろう。
エミリの問いかけに、立ち上がったリヴァイは片手に持っていた資料を突き出す。
「これは……」
「お前のクローゼットから、ハンジと二ファが見つけた資料だ」
「……どうして、」
「仕事部屋の棚から薬品が消えてりゃ、そりゃあ騒ぎにもなるだろう。明らかに様子がおかしいってな」
迂闊だった。このような形でバレてしまうことを忘れていた。部屋を施錠しておくべきだったと後悔する。
「で、エミリよ……お前、何を考えてやがる」
「何をって……決まってるじゃないですか。兵長も知っていますよね? この子どもたちが、ここで何をされているのか……」
「それで?」
「……だから、この子たちをここから助けようと思って……」
「その為に、お前は何をしようとしている」
威圧的なリヴァイの問いかけ。
リヴァイがどんな回答を求めているのかわからず、エミリはなんと答えていいのやらといった状態だった。