Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第20章 約束
(教えて……)
この状況を打破する方法を……
(おしえてよ……)
子どもたちが、助かるのならそれだけでいい。
自分が犠牲になることで、子どもたちの未来が約束されるのであれば、この心臓を人類から子どもたちに捧げたって構わない。
だから……
(…………誰か、来て……)
自分で勝手に始めたことなのに、ここに来て弱音を吐くことしかできない自分が、本当に嫌いだった。
誰にも相談しなかったくせに、周りに迷惑をかける程のことをしているのに、結局最後はこうやって誰かに縋る。
どこまでも半端だと思う。
こうやって自己嫌悪に陥ってる時間すら惜しいのに、何をやっているのだろう。
(…………私は、どうしていつも、何もできないのよ……)
無力な自分が嫌い。
誰かに頼ってばかりの自分が鬱陶しい。
誰かを思ってやったこと、それは、自分勝手なただの我儘だった。
ルルたちに助けると約束したのに、結局自分は、嘘つきで見栄っ張りで、すぐに弱音を吐いてしまうような最低最悪な人間だった……────
ガシャンッ!!
突然、響いた大きな音。それに肩を揺らし、エミリはゆっくりと顔を上げた。
コツ、コツ……
鼓膜を震わせる靴音。それを鳴らす人影の正体は、暗くて顔が見えない。
研究員でも入ってきたのだろうか。廊下にあれだけ研究員が倒れていれば、異変を感じて当然だろう。
このままではまずい。
危険を感じたエミリは、子どもたちを隠すように前に立ち、ナイフと煙玉を持って構えた。
「ったく、ようやく追いついた」
「………………えっ」
空耳でも聞こえたのだろうか。エミリは耳を疑い、こちらへ歩を進める人影を凝視した。
(……ありえない。だって、こんな都合のいい話が、現実にあるわけ…………)
誰かに助けを求めすぎて、とうとう幻聴まで聞こえてしまったのかもしれない。
そう思いたいのに、目の前の人影はどんどん大きくなっていく。
「……また一人で無茶しやがって。馬鹿野郎」
鋭い三白眼と乱れた黒髪、呼吸と共に大きく上下する肩。
どれだけ、急いでここまで駆けつけたのだろうか。
そんなことよりもなぜ、居場所がわかったのか。
なぜ、本来いるはずのない存在が、ここにいるのだろう。
「…………リヴァイ、兵長……」