Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第20章 約束
「みんな、ルルは?」
エミリの問い掛け。それに子どもたちは、涙を止めて体を強ばらせる。
それを見てわかった。ルルに何かあったのだと。
まさか、資料に記されていた予定日やりも早くに実験が行われていたのだろうか。
「ねぇ、ルルは? どこにいるの?」
子どもたちに合わせてしゃがみ込み、ルルの居場所を問う。
子どもたちは涙を拭い、震える声で話を始める。
「さっき、つれていかれちゃったの……」
「それは、実験室に連れていかれたってこと?」
「……うん。あのね、ルルおねえちゃんが、ね」
「ゆっくりでいいから話して」
また涙を流し始める男の子。彼が落ち着くように、頬に優しく手を添えて、説明を促す。
「きっと、エミリおねえちゃん、が……くる、から……みんなは、生きてねって……」
それだけ話すと、男の子は再び泣き叫んだ。それに釣られて他の子どもたちも涙を流し始める。
また、ルルは強がっていたのだろう。
本当は、行くのが怖い。誰かに委ねたかったはずだ。それでも、大人しく着いて行った理由は、ルルが子どもたちにとって"お姉ちゃん"だから。
「エミリ、おねえちゃん……おねがい。ルルおねえちゃんを、助けて!!」
「おねがい!!」
懇願するようにエミリの服を握り締め、詰め寄る子どもたち。
(どうすれば……)
ルルを助けに行こうと思えば、出来なくもないかもしれない。しかし、その間この子たちはどうすれば良いのだろう。
放っておけば、連中に見つかり連れ戻されるだろう。それだけではない。檻から出た罰として、折檻される危険性もある。
かと言って、一度子どもたちを森の外まで避難させるにしても、行って研究所に戻って来る間には、既に実験は始まっている。
(……どう、すれば……いいの?)
皆を助けるためには、どうすれば良い。
どんな方法がある?
どの方法を選べば良い?
(わからない……)
ここまで来て、こんな状況に追い込まれるなんて。エミリの心に募るのは、焦りだった。