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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第20章 約束




「みんな!!」


10日前に会った時と同じように、端の方で身を寄せ合いながら顔を俯けていた子どもたちは、エミリの声に反応し勢いよく顔を上げた。


「エミリ、おねえちゃん……?」

「おね、ちゃん!!」


エミリの姿を確認した子どもたちは、立ち上がってエミリの元へ駆け寄る。


「今すぐ出してあげるからね!」


リュックから取り出したのは、鍵の代わりに用意した硫酸。錠は、鉄でできている。鍵を持っていないのであれば、硫酸を使うしかないという結論に至った。

他にも錠を解く方法はあるのかもしれないが、エミリにはこのような単純な方法しか思いつかなかったのだ。


「危ないから、皆は下がってて」


硫酸は取り扱いに細心の注意を払わなければならない。怪我どころの話では済まなくなるからだ。

子どもたちにそんな重傷を負わせるわけにはいかない。そして、自分自身もこんな所で重傷を負わないためにも、できるだけ距離を取るように子どもたちに指示を出した。

厚手の手袋を装着し火ばさみを手に持つ。瓶を取り出したエミリは、硫酸が入れられた蓋を開けた。
火ばさみで錠を挟み、そして、慎重に液体を垂れ流していく。

錠と同じく鉄の仲間である火ばさみも溶かさぬように、少しずつを液体を垂らし、錠が溶けるのを待った。


一秒、一分、たった短いその時間が長く感じられるのは、エミリの中に焦りがあるから。
それが大きければ大きいほど、時間が進むスピードはとても遅い。


何分経ったかなんてわからない。ようやく錠を外せるほどに鉄は溶け、牢を開けることに成功した。
火ばさみを捨て、硫酸の蓋を閉めたエミリは、瓶を地面に置いて扉を開ける。


「早く出て!」


開いた扉。子どもたちは、信じられないといった表情で、牢の向こうを見つめる。

自分が死ぬ目的以外で、通ることなど無いと思っていた、その扉。でも今は、未来を生きるためにくぐり抜けることができる。

それを感じた子どもたちは、涙を流しながら、檻の外で待つエミリに飛びついた。

堰を切ったように大きな声で泣き叫ぶ子どもたちの頭を、一人ひとり、優しく撫でていく。

よく頑張ったね。
子どもたちに向けて口にしようとしたエミリは、そこで気づいた。

ルルの姿が、無いことに……
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