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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第20章 約束




『……ぼ、く……おそとに出たい』


ルルの後ろから、幼い男の子の声がポツリと聞こえた。


『わたしも、こんなところ……イヤ、だよ……こわい……』

『……ぼくも……!』

『わたしも出たい!! もういっかい、おひさまが見たい!!』


啜り泣く声、震える小さな体。
手の甲で雫を拭っても、小さな顔はどんどん自分の涙で濡れていく。

それに伴って、赤ん坊はわんわんと泣き始め、次第に皆で声を上げて涙を流していた。

ルルは、突っ立ったままその光景目に映す。そんなルルの目には、戸惑いが表れていた。


『……ルルちゃん、我慢しないで』


エミリには、今のルルの気持ちが理解できた。


『皆のために頑張ってたんだよね』


"お姉ちゃん"だから、しっかりしなくてはいけない。

子どもたちの中で、ルルが最年長だ。だから、無意識に責任感に追われていたのだろう。

泣いてはいけない。
弱音を吐いてはいけない。
誰かを頼ってはいけない。
我儘を言ってはいけない。

我慢や強がってしまうルルの気持ちが、その辛さが、姉として育ってきたエミリには、痛いほどに共感できた。


『いいんだよ、泣いても。今まで、苦しかったよね』


エミリが優しく声を掛ければ、ルルの頬にも涙が流れ出す。
そんな小さなお姉ちゃんに、エミリは目元にそっと親指を添えて涙を払った。


『私が、ルルも、皆も、必ずここから出してあげるから』

『……おね、さん…………ぜったい、だよ?』

『うん』

『やくそく、だよ?』

『うん、約束』


ルルの頭をもう一度、エミリはあやす様に優しく撫でて微笑んだ。

その時、エミリが入ってきた扉の向こうから、足音が聞こえた。それにルルを始め、子どもたちが涙を止めて息を潜める。


『おねえさん……にげて』

『えっ』

『あのね、わたしたちのこと見てる人がくる時間なの……だから、にげて』


ルルにそう急かされるが、どうすべきか悩む。
しかし、この人数の子どもたちをここから救出させるには、準備が必要だ。それが全く無い状態で、奴らに対抗できるはずがない。


『わかった……』


ルルたちを助けるために、今は身を引くのが賢明だろう。立ち上がったエミリは、ルルたちを見下ろし言った。
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