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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第20章 約束




『お姉さん、ありがとう!』


まだ何もしていない。
それなのに、礼を言われる筋合いなどない。

ルルは笑顔を見せてはいるが、きっと痩せ我慢だってしている。

本当は、出たくて出たくて仕方が無いだろう。
まだ生きていたいと、思っているだろう。

だけど、それすらも口に出そうとしない理由は、巻き込んでしまえばエミリが、危険な目に合うと予想できているから。


それでも、このまま大人しく引き下がるわけにはいかない。

幼い子どもにここまで言わせてしまった。無理をさせてしまったのだ。

勝る思いは、必ず助けたいというものだけ。


『贅沢なんかじゃないよ』


鉄格子を握る手を解き、その間に腕を通してルルの頬に触れた。
柔らかくて、とても優しい体温をしている。


『全然、贅沢なんかじゃないし、罰なんて与えられる方がおかしいの』


頬に触れた手を今度は頭へ滑らせ、エレンにしてきたようにルルの頭を撫でる。


『お月様とお星様って、知ってる?』

『おつきさまとおほしさま?』


初めて聞くのだろう。首をこてんと傾けて、エミリの言葉を復唱する。


『お日様と同じ、夜になると空に浮かんで、キラキラと輝いているの』


太陽とはまた違う輝きと美しさ。それらは、人の心を魅了する。
いつ見たって、自分がちっぽけだと思わせるほどに自然の力というものを感じられる。

それを、ルルや子どもたちに見せたい。この世界には、まだまだたくさんの素晴らしいものが存在しているのだということを、教えてあげたい。


自由な世界で、生きてほしい。


『ねぇ、皆……一緒に見ようよ。お星様』

『おほし、さま……?』

『だから、生きよう! こんな所で死んじゃだめ』

『でも……』

『本当に、このままでいいの? そんなことないよね。教えて、皆の本当の気持ち』


辛い思いをしたいと思う人間なんていない。

壁の中から外の世界に憧れるように、真っ暗な檻の中から憧れるのは光が差す明るい世界。

だからルルたちにも、そんな世界で生きて欲しい。

眩しい太陽の光を浴び、大地を駆け回り、爽やかな風を感じながら、美味しいものをたくさん食べて、好きなことを見つけて、夢を追って、光り輝く未来を目指して、成長してほしい。

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