Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第20章 約束
自室へと戻ったリヴァイは、兵服から動きやすい服へと着替え、クローゼットを開けた。
手前に並べていた箱を外へ出し、奥の方に仕舞っている箱から、一枚の布を取り出す。
それは、リヴァイが地下街で暮らしていた時に使用していた外套。
かつての仲間であったファーランとイザベルと共に仕事へ向かう時は、よくこの外套を羽織っていた。
そんな物でも、リヴァイにとっては思い出の品。こういった物を残しておく主義では無いが、どうしても捨てられなかった。
箱を床に置きっぱなしのまま、今度は棚の引き出しを開けて中を探る。
取り出されたのは、外套と同じく地下街の頃に愛用していたナイフだった。
それを腰に装着し、外套を羽織る。
(まさか、こいつをまた使うことになるとはな……)
両方共に二度と使うことはないだろうと思っていた。が、外套は身を隠して移動するのに丁度良いし、ナイフも護身用に持ってこいの武器だ。
懐かしい感覚に浸りながら、準備を終えたリヴァイは自室を後にした。
次に向かうのは、訓練所付近の倉庫。立体機動装置を装着するためである。
今から王都へ向かうとなれば、ここからでは時間が掛かってしまう。人目のつかぬ場所で飛びながら向かった方が早いと判断した。
扉を開け、普段、自分が使用している立体機動装置を取り出し腰に装着した。
最後に不備が無いかだけの確認を終え、全ての準備が整い、リヴァイは大きく外套を翻す。そして、兵舎の外へ駆け出した。
暗い夜道。
時々立体機動を使いながら、エミリに追いつくために進んでいく。
ハンジから子どもたちの話を聞かされた時、驚きと同時に怒りが沸いたのはもちろんのこと、また無茶をして一人で行ってしまったエミリに対しても憤りを感じていた。
(クソッ……特に強くもねぇクセにお前はいつも、何故一人で行っちまう……)
エミリの格闘術の評価は、今でも高い。だとしても、一人で危険を切り抜けられるほど強くはない。
そして、それはエミリ自身もわかっている。それでも、一人で行かざるを得なかったのだろう。
(頼むから……俺が行くまで余計なことすんじゃねぇぞ……)
後は時間との問題だろう。
冷や汗を一筋流し、リヴァイは暗闇を駆け、大切な想い人の元へその足を進めていた。