Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第20章 約束
それぞれが緊張と不安を抱え、空気が張り詰めていく。
様々な感情が交差する中、頭を巡らせ必死にこの現状を打破するための道を探していた。
そんな中、ソファから立ち上がる者が、一人。
「……リヴァイ?」
無表情のままいつも以上に冷たい瞳を携え、エルヴィンを見下ろすリヴァイ。
そんな彼から発せられる言葉は、簡単に予測できた。
「俺が一人で、あいつを迎えに行く」
その言葉に、エルヴィンとハンジ、そしてミケ以外の者たちが驚愕した。
信じられないといった表情を浮かべる彼らに対し、エルヴィンは冷静にリヴァイを見上げている。
「一人で、行けるのか?」
「行くしかねぇだろ。大体、全員で押し掛けてみろ。あいつが何のために一人で奴ら元へ乗り込んだと思ってる」
「ああ、それはわかっているよ。……なら、お前に任せよう」
エルヴィンの下した判断に納得したリヴァイは、そのまま準備をするために扉の方へ歩いていく。
ドアノブを握り扉を押し出したリヴァイは、団長室を出て行く前にこう言った。
「後のことは任せる」
そう言い残し、リヴァイは乱暴に扉を閉めて行ってしまった。
再び静寂に戻った団長室。取り残された者達は、ようやく声を上げる。
「団長! 本当に兵長だけで大丈夫なんですか!? 確かに兵長は人類で一番強いです! けど……」
抗議するのはオルオ。突然の事実を受け入れるのも必死な状態で、感情のままに叫んだ。
「多分、リヴァイも我慢ならなかったんだと思うよ」
答えたのは、エルヴィンではなくハンジ。
疲れたように微笑み、ハンジは数年前を思い出しながら話を続けた。
「リヴァイも地下街の出身だからね」
「…………え、兵長が?」
「地下街の、出身?」
エルドとグンタが、衝撃的な事柄に掠れた声で、ハンジに教えられた事実を復唱していく。
初めてその事実を知ったリヴァイ班のフィデリオら五人は、驚きのあまり何と言葉を紡いで良いのかわからなかった。
「きっと、エミリのことだけでなく、子どもたちのことも気がかりなんだろうね」
子どもたちと同じく劣悪な環境で生まれ育ったリヴァイ。ここに居る誰よりも、地下街という場所を理解している。
子どもたちを助けたい思いは、きっと誰よりも強いだろう。