• テキストサイズ

Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第20章 約束




「……どうして、エミリは何も言ってくれなかったんですか」

「おそらく、だが……」


一つひとつの言葉を震える声で絞り出すペトラ。再び説明をするのは、ハンジではなくエルヴィンであった。


「まず、第一に兵団に迷惑が掛かると考えたのだろう。しかし、それは単純な話ではない」


エミリは、計画を妨げるために奴らの元へ乗り込んでいる。もし、そこでエミリの正体が調査兵団の一員と相手側に知られてしまえば、調査兵団自体が追い込まれる危険性も出てくるということだ。

例えば、開発中の新しい薬品の研究を調査兵団によって邪魔をされた。などという記事が世間に流されれば、それこそ調査兵団の支持率は格段に下がる。

場合によっては、解散に追い込まれる可能性もあるのだ。


この計画が公になっていない以上、彼らは思うがままに民衆も王政も操作できるということである。


「だからエミリは何も言わず、10日かけて綿密に準備をし、一人でアジトに乗り込んだ。自分の正体が調査兵であることが知られなければ、もし奴らに捕まったとしても、おそらく処分されるのはエミリ一人だけで済む。そう考えたのだろう」

「……エルヴィンの推理と私も同じだよ。その証拠にエミリは今日私服で出かけたし、仕事部屋の机の引き出しからは、兵団証が出てきた」


人差し指と中指で胸ポケットからエミリの名刺を取り出し、机の上へ滑らせる。

兵士は常にそれを身につけて置かなければならないが、それが兵舎に残されているということは、エルヴィンの推理も正解と判断すべきだろう。


「……薬品がもぬけの殻だった、というのはどういうことですか?」

「多分、奴らに対抗するための薬を作っていたんだろうね」

「薬って?」

「睡眠ガスとか爆薬とか、相手を麻痺させるものとか色々……」


エミリが数日の間、部屋に篭もってばかりだった理由は、それだろう。

しかし、そこで疑問が生じる。何故、エミリがそんな危険薬物の作成方法を知っているのか、ということだ。

/ 727ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp