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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第20章 約束




「…………あの時からだよね。エミリの様子が変わったの」

「……まさか」


険しい表情で顔を見合わせるペトラとオルオ。

二人だけでなく、ハンジが次に何を言おうとしているのか、誰もがそれを察した。


「そう、あの日エミリはずぶ濡れだったけど、帰宅する時間はかなり遅かった。どこかで雨宿りをしていたんだろうね。

そして、次の日から急に様子がおかしくなった。

考えられるのは、エミリが雨宿りしていた場所は、その研究所で、たまたまそこでこの資料を見つけてしまった、ということだ」


まだ憶測でしかないハンジの推理。だが、それはほぼ正しいと判断して間違いないだろう。

そして次に、エミリがここにいない理由の説明に入るが、何となく全員がその理由にも気づいていた。


「ハンジさん、エミリが帰って来ないのも、これまで様子が変だったのも、全部また……」

「……そうだよ、フィデリオ。また一人で抱え込んで、一人で行ってしまったんだ。この実験で利用されている子どもたちを助けるために、ね」


長い溜息と共に頭を両手で掻き毟りながら、ハンジは項垂れた。

もっと早くにこの事に関して気づけたのではないかという後悔。こんな事になるならば、もっと早くに調べておくべきだった。

そんな自分に対する不甲斐なさと、何も言わずに危険なことに関わってしまったエミリに対する怒りが、ハンジの心を追い詰めていた。

眉を寄せ、片手で顔を覆うハンジを見つめながら、ペトラは昨日エミリとアメリと出掛けた時のことを思い出す。


「……そう言えば、昨日……エミリが、私とアメリにこう聞きました」


静かに切り出されたペトラの話に、全員が注目する。


「『…………もし、私が何かしても……二人は、待っててくれる?』って……」

「……そう。他にエミリは何か言っていた?」

「いえ、本当にこれだけしか……」


話しづらかった。それもあるのだろう。
しかしだからと言って、こんなにも危険なことに、誰にも相談せずどうして一人で首を突っ込んでいくのか。

エミリらしいといえば、らしい。だけど、もっと頼って欲しかったというのが、ペトラの本音だった。
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