Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第20章 約束
地下街、そのワードに反応したのは、リヴァイだけでは無い。彼とはまた違った意味で、フィデリオやペトラたちも驚愕する。
「地下街って確か、王都の……」
「そう。昔は、巨人からの避難場所として検討されていた所だ」
しかし、地下移住計画は中止となり、現在は無法地帯と化している。
犯罪や殺人など、日常茶飯事の世界。逆に言えば、そうしなければ生きていけないような場所だ。
子供は主に飢えに苦しみ、女は男に売り買いされ、年老いた者は病に侵され、やがて死ぬ。
壁の外と同じ、弱者が生き抜くには不自由な所だ。
憲兵団が地下を取り締まってはいるが、その中にも法に背くような輩は存在している。
地下とは、そういう場所なのだ。
そんな地下街の話を聞けば、誰もが悪い印象しか浮かばないだろう。
それはもちろん、地上で暮らし、その姿を見たことが無いフィデリオたちも同じ。
「……その、地下の子どもたちが、実験台に?」
「そうだ。しかも、その子たちは皆親を亡くしている。奴らは、そんな子どもたちを保護すると見せかけ、騙し、こうして利用しているんだ」
地下に住むような輩ならば、何をしたって許される。この実験者たちは、そう考えているのかもしれない。
地下は、犯罪が起きても当たり前の場所。子どもを脅し利用することは、そこに住んでいる奴らにとっては良い商売道具なのだ。
「ンなことよりハンジ。それとエミリがどう関わっているってんだ。その資料は、あいつの部屋から出てきたんだろう。
まさか、地下に迷い込んでいた、なんて言わねぇだろうな?」
正直、リヴァイも少し混乱していた。
どんなに悪質な場所であれ、地下街はリヴァイの故郷でもある。その故郷が、まさかこんな所で関わってくるとも思わない。
その上、想い人が事件にどう関係しているのか、何故そんなことになってしまったのか、そもそも何処でその資料を見つけてきたのか、話は全く繋がっていない。
気持ちは焦る一方だ。