Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第20章 約束
調査兵団の本部に設置されている研究室。そこでハンジは、こめかみに指を抑えながら何やら難しい顔で唸っていた。
最近そんな仕草が目立つハンジ。そうしてある事について考える時間は、日に日に増していた。
「あの、分隊長……どうしたんですか? 最近、ずっとそうしてません?」
ハンジはいつも異常だが、その異常な言動がまた増えたのかと思うと、モブリットもこのまま放ってはおけなかった。
何か新しい巨人の捕獲法でも考案中なのだろうか。
「……モブリット、最近のエミリの様子をどう思う?」
「はい?」
てっきり巨人のことを考えていたのかと思いきや、自分の部下について頭を働かせていたとは思わず、気の抜けた返事をしてしまった。
「なんっか、変なんだよね〜。ずっと仕事部屋に篭ってばっかりだしさぁ……あんまり笑わなくなった気がするし……」
「……確かに、そうですね」
「お陰様でエルヴィンはソワソワしてるし、リヴァイもピリピリしてるし」
「団長と兵長が、ですか……?」
リヴァイはともかく、エルヴィンのそんな姿など想像できないと、モブリットは信じられないといった顔を見せる。
「仕方ないだろう。エルヴィンってば最近、エミリに対してどこぞの親バカ並に過保護増してるし、リヴァイもリヴァイでエミリにベタ惚れでさぁ、彼の恋心は収拾がつかないことになってるしねぇ……」
やれやれと頭を振るハンジにモブリットはつっこむ。親バカ並に過保護なのはあんたも一緒だろう、と。
「でも、そんな二人がそれだけエミリに対して危機感を感じてるってことは、やっぱり何か起きようとしているんだよ……」
「分隊長、そこにご自分もカウントして下さい」
「ねぇ、モブリット。明日、エミリは何か予定入ってたっけ?」
「午後からファティマ先生の元へ講義のはずですが……」
「そっか……」
なんか一人で行かせるのは心配だなあ、と再びこめかみを抑えては唸り始める。
巨人以外のことでこれ程悩みを見せるハンジの姿は珍しい。モブリットは、色んな意味でこれから先の未来が心配で仕方が無かった。