Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第20章 約束
約束の午後2時、私服に着替えたエミリとペトラは、兵舎の門でアメリを待っていた。
忙しいのに、と文句を垂れるエミリを引っ張ってきたペトラの表情には、少々疲れが表れている。
何故、そんなにも自分の用事を優先したがるのか。その理由がわからなくてもどかしい。
チラリとエミリに視線を寄越せば、ぼーっと自分の足元を眺めているだけ。そんな彼女は、一体何を考えているのだろう。
「おっ待たせ〜!!」
ペトラがエミリを気にかけていると、元気な声が響き渡る。それがアメリのものだということは、すぐにわかった。
紺色のロングスカートとフリルがあしらわれた真っ白なシャツを見にまとい、薄い紫色の花の髪飾りが、アメリを落ち着きのある上品な女性へ魅力を引き立てている。
「わあ! アメリの私服とっても素敵ね!!」
女の子らしいコーデにペトラは両手を合わせてうっとりとアメリを見つめる。
ペトラもそれなりにお洒落には敏感だが、アメリのそれはペトラを超えていた。
「アメリって、本当にお洒落さんだよね。訓練兵の時からそうだった」
「よくエミリを連れて、二人で街に洋服買いに出掛けたよね〜!」
「私は強制連行されただけなんだけど?」
そのように昔を思い出しながら会話を交わすエミリの表情は、とても優しいものだった。
そんな彼女の顔を見るのも、ペトラは久しぶりだと感じる。
少し気分が乗り出したエミリの様子に胸をなで下ろし、ここで立ち止まって喋っているわけにもいかないと、三人は例の喫茶店に向けて足を進めた。