Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第20章 約束
仕事部屋の前に辿り着いたアメリは、早速ノックをして部屋の主を呼び掛ける。
3回ほど扉を叩いて名前を呼べば、数秒後にガチャと扉が開かれた。
「……アメリ、私いま忙しいんだって…………なんでペトラまで?」
何をしに来たのだと、眉間に皺を寄せるエミリは、二人の来訪をあまり歓迎していない様子だ。
「さっき、ペトラと話してたんだけどね、明日、三人で街に出掛けようよ!!」
「明日? 何でまたそんな急に……ていうか、だから私忙しいんだってば……」
「まあまあ、そう言わず! ほら、近場に新しい喫茶店できたでしょ? そこのケーキ食べに行ったんだけど、すっごく美味しくてね〜」
「はいはい、また今度ね」
「えぇ!? エミリが食べ物に食いつかないなんて!!」
いつもであればすぐに飛びつくような話題なのに、今の彼女には、食べ物も効果が無いらしい。
隣で話を聞いていたペトラからすれば、それはそれでそこで話に乗っかってしまえば流石に単純すぎるだろうと、心の中でつっこんでいた。
「ねぇ、エミリ……行こうよ。私もさ、いつも不安なんだって……またエミリたちが壁外調査に行っちゃうんだってこと考えたら、遊べる時に遊んでおきたい……だから、行こう?」
寂しさと悲しさが入り交じった表情で微笑むアメリの顔に、エミリは黙り込む。
彼女の言葉に少し考える素振りを見せた後、大きく息を吐いた。
「……わかった」
「ホント!?」
「でも、ちょっとだけだからね……」
「やった! じゃあ、明日の午後2時に調査兵団の兵舎の門に居るから、そこでよろしく〜ペトラもね!!」
「うん、わかった!」
「はいはい……じゃあ、私課題に戻るから」
そう言って部屋に戻るエミリは、やはり異様と言っていいほどに素っ気ない。
それに違和感を覚えながらも、なんとか誘い出すことに成功し、視線を交えたアメリとペトラは頷きあった。