Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第5章 壁外調査
「兵長!!」
「エルドか」
そこへ、一人の男性兵士が険しい表情でリヴァイの隣へ着地した。
エルドと呼ばれた彼は、リヴァイ班の班員の一人だ。
討伐数、討伐補佐数ともに非常に優れた戦績を持っており、リヴァイ班に任命された。
リヴァイ班の班員については新兵の間でも有名だった。リヴァイから直々に選ばれた兵士、それは新兵にとって憧れの対象でもあるからだ。
「右翼索敵、壊滅的打撃! 増援を要請します!」
「わかった。エルド、お前はこいつらを頼む」
「了解です!」
ペトラとオルオ、今の二人の状態を考えると、いくら巨人に恐怖心を抱いていないエミリがいてもまだ新兵だ。三人を放ったらかしにする訳にはいかないとのリヴァイの判断だった。
エルドにエミリ達三人を任せたリヴァイは、再び立体機動で飛び上がり行ってしまった。
「大丈夫か?」
震えるペトラとオルオを交互に見たエルドが苦笑を浮かべ声を掛ける。涙を流しながら返事を返す二人にとりあえず安堵した。
「今は索敵があまり機能せず状況はかなり最悪だ。死者や怪我人も増えている。俺もすぐに加勢しなければならない。お前達を各班長の元へ送り届けることも不可能な状態だ」
エルドの言葉に、ペトラとオルオは再び震え上がる。エミリは険しい表情で彼の話を聞いていた。
まだ経験の無いエミリには正しい判断というものが分からない。だが、索敵も機能していないのであれば、エルドの言う通り各所属班の元へ戻る余裕も無いだろう。ならば──
「……私達は、近くにいる班と合流し共に行動すべきですね」
「ああ。無理に自分の班へ戻るより早い。ここからなら、ミケ分隊長の班が一番近い。お前達をそこまで送り届ける」
「わかりました」
ミケ班、そこはフィデリオが所属している班だ。
第一拠点を出発してから一度も姿を見ていないが大丈夫だろうか。そんな心配が過ぎるが、今は自分達のことが先だ。
「ペトラ、オルオ、もう動けるな」
「「は、はい……!」」
「よし、二人はとにかく着いて来てくれ。もし、どうしても俺が途中で離脱しなければならない時は、エミリに任せる」
「はい」
地面にへたり込んでいる二人を立ち上がらせ、一同はミケ班の元へ急いだ。