Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第5章 壁外調査
更に肩を縮こませるペトラに、エミリは何と声を掛ければ良いのか慌てる。
『気にする必要はない!』は、少し軽すぎる。そんな事で流せるほど乙女心は簡単なものではない。
「まあ、無事で何よりだ……」
「!」
そこでリヴァイが、幾分か優しさを込めた声色で再び言葉をかける。
流石にまずいと思ったのだろうか、エミリにはリヴァイのことはよくわからないが、その言葉と声音から彼の温かさを感じた。
ペトラは驚いたように顔を上げる。
そんな彼女の瞳には、涙が溢れていた。
「うん! 無事で良かった!!」
リヴァイに続いてエミリが優しく微笑み、隣からペトラの肩を抱く。優しく背中を摩れば、ペトラは涙を流してエミリの手を握った。
良かった。
エミリは胸を撫で下ろす。
「うわああああ」
そこに、再び兵士の声が響き渡る。
これはエミリもペトラもよく知っている。オルオのものだ。
「オルオ!?」
叫び声がした方へ振り向けば、オルオは巨人に掴み上げられていた。今にも口に放り込まれそうな状態に、再び緊張感が走る。
「た、助けてくれぇ……!」
涙を流しながら懇願するオルオ。
巨人はオルオを食べようと、彼を掴んだ手を口元へ持って行く。
「オルオ!」
「チッ」
エミリは急いで駆けつけようとしたが、リヴァイの方が速かった。巨人の腕を切り落とし、背後へ回って項を切りつける。
閃光の如く、あっという間に巨人を倒したリヴァイが、ひらりと地面に着地した。
「オルオ! ちょっと大丈夫?」
エミリとペトラの近くに、リヴァイが切りつけた巨人の腕ごと落下したオルオは、蒸気を放つ巨人の掌の上で震えていた。
そして目に入ったのは、オルオの尻の下に作られた水溜りだ。
「オルオ、しっき」
「言うなああ!! 分かってるよ!!」
滝のように涙を流し、鼻水を垂らすオルオに遠慮なく言おうとしたエミリの言葉はオルオの声によって遮られる。
「そんだけ叫ぶ元気があるなら、大丈夫そうだね」
「お、お前……俺のこと何だと……!!」
「はいはい。ホント、オルオも怪我とかなくて良かったよ」
ペトラのように抱き締めてはやらないが、ポンポンと優しく背中を叩いた。