Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
その後は、無事にアメリを兵舎へ送り届け、自分たちの居場所へ帰るべく、エミリとリヴァイは並んで歩いていた。
その道中、アメリから預かったネックレスを手に乗せ、エミリは、嬉しそうにそれを眺め続ける。
「おい、嬉しいのはわかるがちゃんと前見て歩け。転ぶぞ」
「大丈夫ですってばっぁああ!?」
言った矢先につまづいて地面に引っ付きそうになるエミリ。リヴァイはすぐに彼女の腹に腕を回し、状態を起こす。
「ほら見ろ。馬鹿野郎。どんくせェな……それでも兵士か」
「ぐっ……こ、心に刺さる言葉をつらつらと並べないでください……」
自分の不注意であることはわかっているが、怒られるとついつい反論してしまう。
口を尖らせながら、仕方なくネックレスを首につけて歩き出す。
「そういやエミリ」
「なんですか〜?」
「ファティマばあさんの講義、明日からなんだってな」
急に話題が薬剤師関連へ転換し、エミリは尖らせた口を元に戻す。
何故リヴァイがそれを知っているのか。聞かずともエルヴィン辺りから聞いたのだろうと察しがつき、彼の話にそのまま頷く。
「はい。もうすぐ壁外調査ですけど、だからこそ早めに知識と経験を増やして行こうって、先生に言われたんです」
エミリはまだ資格を持ってはいないが、ファティマに指定された薬のみ、調合や人に摂取させる許可を特例で得た。
その範囲を増やすためには、勉強も早めに始めた方がいいとのことだ。
「それは構わねぇが、お前は休むことも頑張れよ」
「あはは……はい」
加減を知らないエミリは、また無茶をしでかすだろう。
これ以上、心配事を増やしてほしくないが、エミリには期待しない方が逆に心臓に悪くないかもしれない。
隣を見れば、楽しそうに笑うエミリの横顔が目に映る。
いつもそうだ。毎日、こんな風に笑って過ごしている。
いつまでも見つめていられるその笑顔を、これから先もずっと見守っていきたい。この命がある限り。
暗く静かな世界に冷たい風が吹き抜ける中、肩を並べて歩く兵士長と一人の兵士。そんな二人の頭上には、幾つもの小さな小さな星が、強く、そして、美しく煌めいていた。