Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
エミリにはわかる。
親がいない寂しさや悲しさも、弟や妹を心配する気持ちも、どちらも理解できる。
だから、アメリが調査兵団を避けた理由だって、共感できるのだ。
「アメリ、謝らないで。こっちのことなんて気にせず、家族のために生きてあげて。ね?」
アメリの手を取り、しっかりと握って伝えれば、エミリの思いを感じ取ったアメリは、小さく微笑んでありがとう、と返事をした。
「あ、そうだ。気休め程度にしかならないと思うけど……」
何かを思い出したアメリは、エミリから手を離して首の後ろへ手を回す。
彼女が取り出したのは、丸い石が付けられたネックレスだった。
「これ、エミリにあげる」
「あっ、このネックレスって……」
その石は、以前にも見せてもらったことがある。いまは暗いため、石の色の区別がはっきりとわからないが、本来は、秋空色のように透き通った美しい石なのだ。
「……でも、これアメリの大切な物なんでしょ? 受け取れないよ」
「だからこそ、エミリに持っていてもらいたの」
「どういうこと?」
アメリの考えが読めず、エミリは困惑したまま説明を求める。
「いつか……いつか、人類が巨人の脅威から解き放たれた時、返してくれればいいから」
「あっ」
「だから、その時まで生きて」
鈴のような音色を奏でる声と、花のように穏やかで優しい表情で、大切なネックレスを差し出すアメリ。
エミリは、親友の想いが込められた贈り物を手に取り、落とさぬように、壊さぬように、優しく両手でネックレスを包み込む。
「ありがとう。必ず、生きて返すから」
「うん!」