Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
夜は、ちらほらと灯る家の明かりと空に浮かぶ月だけが、街を照らすのみ。そのため、足元や周囲の様子を確認するのも暗く、歩くのも一苦労だ。
エミリとアメリは会話を交わしながらも、前を歩くリヴァイを見失わないように注意した。
「それにしても、エミリが元気そうでよかったよ」
静かな夜道に響く小さな声には、安堵が含まれていた。
「壁外調査って聞く度にいつも心配してたんだからね」
アメリが二年前にエミリと出会った時、エミリは既に所属兵科を調査兵団にすると決めていた。
エミリが卒業してからは、どうか命を落としませんようにと、何度星に願ったことだろう。
そして、これからもその祈りは続く。エミリが調査兵団で生き続ける限り、ずっと……
「また、壁外調査あるんでしょ?」
「うん。次は二週間後だって」
「そっか……」
緊張と不安が入り交じった表情で、アメリは瞼を伏せる。
二週間などあっという間に過ぎて行く。
いっそのこと、このまま時が止まってしまえばどんなに良いだろう。しかし、残念ながらこの世界に生きる生き物全て、時間の流れに逆らうことも止めることもできない。
「私は、この先もずっと祈り続けるしかないんだね。私も一緒に戦えればよかったんだけど……ごめんね、エミリ」
「仕方ないよ! だって、弟さんや妹さんのことがあるんでしょ?」
「……うん、そうなんだけどね」
寂しそうな笑みを浮かべ、アメリは真っ暗な空を見上げて自嘲した。
アメリには、二人の弟と妹が一人いるという話を聞いた。四人には、育ててくれる親が居ない。
ここでアメリが調査兵団に入ってしまえば、いつか彼女の弟や妹たちは、再び家族を失う苦しみに見舞われてしまう。
それを防ぐために、アメリは調査兵団ではなく、駐屯兵団を選んだのだ。