Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
「そろそろ、お暇しようか」
長時間、食べて飲んで、たくさんのことを語り合った小さな宴も、エルヴィンのその一言で終了となった。
席を立った彼らは、勘定を済ませて店の外へ出る。
ひんやりと冷たい風が、火照った体の体温を下げていく。その感覚がとても心地よかった。
「アメリ、このまま駐屯兵団の兵舎に帰るんだよね?」
「うん、もちろん」
「一人じゃ流石に危ない、よね? どうしよう……」
いくらアメリが首席で卒業した兵士だからと言って、このまま暗い夜道を一人で歩かせるわけにはいかない。
辺りが暗いだけでなく、治安も悪くなるためとても危険だ。
「なら、リヴァイが着いて行ってやればいい」
「おい待て。何故そうなる」
突拍子もないエルヴィンの提案に、リヴァイは再び顔を顰めた。彼にとっては面倒極まりないお守りだろう。
「まあ、そう言うな。エミリも一緒に着いて行くのだろう?」
「あ、はい。そのつもりです」
大切な友達を一人で帰らせるなんてこと、エミリは絶対にしない。かと言って、女二人だけでは意味が無い。
やはりこういう時は、男が着いて行くのが一番安全と言って良いのである。
「リヴァイ」
エルヴィンは、心底面倒くさそうに顔を歪めるリヴァイの肩に手を置き、小さな声で囁いた。
「アメリを送った後、エミリと二人で過ごす時間ができるだろう?」
正に悪魔の囁き。
ピクリとそれに反応したリヴァイは、仕方ないと軽く舌打ちを鳴らし、エミリとアメリの元へ歩み寄る。
相変わらずエルヴィンの手のひらの上で転がされているが、エミリと二人きりの時間を邪魔された今のリヴァイにとっては美味しい話であるため、彼の案に従うことに決めた。
残りの部下や酔っ払い共は、一旦、エルヴィンやミケたちに任せて、リヴァイを先頭にアメリが所属する駐屯兵団の兵舎に向けて、三人は歩を進めた。