Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
「あいつ、駐屯兵団選んだのか」
「そうらしいよ〜」
「勿体ねぇ……あいつ、どうせ首席で卒業したんだろ? なら、憲兵でもいけるのにな」
「それアンタが言う?」
フィデリオも訓練兵団を二位で卒業したのだから、憲兵という選択肢もあった。しかし、彼は迷うことなく死亡率の最も高い調査兵団に入団した。
所属先は違えど憲兵を避けたのはアメリと同じである。
「アメリって首席で卒業したんだ……なら、エミリと一緒だね」
「…………違うよ。全然、違う」
「えっ?」
ペトラは、エミリも訓練兵団を首席で卒業したことを思い出した。しかし、否定的な返事をするエミリの表情が、少し強ばっている様子に違和感を覚えた。
「アメリと私の成績は、同じでも全然違うの。アメリは、私なんかよりもずっとずっと優れた才能を持っているわ」
立体機動、対人格闘、座学、それら以外の訓練成績だって、彼女は全て常にトップだった。
そう、完璧超人とは彼女のような人間を指すのだろう。
「アメリを見てると、本当にどうして私が首席に選ばれたのかわからない。他にもっと適任がいたんじゃないかって……」
ぼーっと遠くを眺めながら、小さな声で自分の思いを吐露していくエミリは、自分を下に見る悪い癖がまた表れていた。
隣で話を聞いていたリヴァイは、親指の腹に人差し指の爪をあて輪っかを作り、それをエミリの額の前へ持っていくとバチンと大きく弾いた。
「い”っ……!! な、何するんですか!!」
いきなりデコピンをカマしてきたリヴァイに、エミリは額を抑えながら抗議する。
「ったく、お前はまたそうやって自分を貶しやがって」
「……だって……」
エミリのこの癖はいつになったら治るのだろうか。
彼女に自信を持って良いと言い続けているが、自虐的な思考を止めない様を見ていると流石のリヴァイも少し苛立ちが募る。
しかし、これはエミリの弱さだ。彼女自身がそれと向き合い乗り越えない限り、この癖が彼女の中から消えることは無いだろう。